第1話:この街では、嘘が先に匂う(無料パート)
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港町《白澱》は、霧が多い。潮の匂いはいつも薄く、石畳はいつも濡れている。
それでも、昨日と今日の違いだけは――匂いで分かる。
カオリは、嘘の匂いを嗅げる。言葉が整う前に、匂いが先に漏れる。甘い嘘、漂白された正しさ、誰かの怒りの鉄臭さ。
倉庫街。煤とタールと濡れロープ。その奥に、匂いの“欠け”があった。空気が薄い。誰の匂いでもない。――無香。
「やめとけ」そう言ったのは、ミオだった。能力はないのに、いつも勘が当たる。ノアは黙って、カオリの腕を引いた。普通の匂いのする優しさ。
それでもカオリは、足を止めない。“正しさ”の匂いがする。誰かが、ここをきれいにした。きれいにしたものは、だいたい隠している。
EP-END PACK
Scent Key:古い紙/墨/海塩(名前だけ)
条文カード001「嘘の甘さ」:嘘は、言葉より先に匂いで漏れる。甘さは罪ではなく、防衛の形。
問い:あなたが最近ついた「小さな嘘」は、誰を守った?